2018 北イタリア横断家具メーカー視察

イタリア貿易振興促進部(ITA)主催のツアーにて、北イタリアの5州12都市を巡り、様々な家具、インテリアメーカーを視察してきました。決して経済状況が良いとは言えないイタリアで急成長を遂げている企業が中心です。その中で特に印象深かったメーカーをご紹介いたします。


北イタリアはアルプス等、豊かな森林に恵まれています。国境付近であるため、古くから家具の輸出入や家具職人の流入が多い土地という背景があります。現在でも、良質なイタリア家具はこの地域で生産されています。


アート家具

ピエモンテ州に工場を構える、アート性の高い家具をつくるGFRUM(グフラム)社はエキセントリックなデザインで60年代、70年代の象徴的な存在です。2000年以降の経営不振が続く中、現オーナーが「バカげたことを真剣にやる会社」とし、救済。見事に復活を遂げた、伝説的な家具メーカーです。


現在は、モダンアートのインスタレーションに登場したりと、現代アート作品の一部として扱われることも。50年ほど前の家具がアート扱いされる面白い現象です。


また近年では、MOSCHINOやポールスミスなどファッションブランドとのコラボレーションも活発です。イタリア家具の中でも際立つ存在なので最初にご紹介しました。


アウトドア家具

近年の傾向としてアウトドア家具の台頭です。イタリアの老舗家具メーカーもアウトドア家具に新たな活路を見出しています。今回視察したのは、アウトドア家具専門に量産するメーカー、NARDIです。ヴェネト州に工場と本社を構える日本未上陸のメーカーです。


工場は完全にオートメーション化されていて、インジェクション成形がメイン。樹脂製のアウトドア家具が量産されています。比較的安価でありながら、豊富なカラーバリエーションとスタイリッシュなデザインでチープさを感じさせないのが、これまでのアウトドア家具とは違います。イタリア国内で急成長しているため、日本上陸も遠くないと感じるメーカーのひとつです。

建具メーカー

ヴェネト州トレヴィーゾに本社と工場を構える、日本未上陸のサッシュメーカーのSECCO SISTEMI社。建具は日本の規格に合わない場合も多く、輸入されにくい商材のひとつ。開口部という概念を覆すような、美しいデザインとスケールそして、高い機能性。サッシュは額縁となり、ショールームから見える、周囲の山々が絵画となります。


建物の外の世界と、建物の中の境目が限りなくなり、周囲と一体化します。巨大な開口部はスタイリッシュな操作パネルで操作し、予想外の形で開閉します。そのシステムは日進月歩で開発されています。ひたすら繰り返される試運転。そして、無数の金型が工場にはありました。

ラグ・カーペット

エミリアロマーニャ州に本社を構えるSITAP(シータップ)社は世界中のラグやカーペットを扱う会社です。もとは、トウモロコシなど農業を営む会社。インテリア関連の会社としては、歴史が浅いもののセレクトされた製品に定評があり、急成長しています。


工場では世界中から集まったラグやカーペットが大量にストックされています。プロジェクトに応じて最適なサイズにカッティングされます。オリジナル製品の開発も活発。


ショールームでは製品をより魅力的に見せる工夫が。一角に撮影スペースが設けられていて、常に商品の魅せ方の工夫がされています。SNS等の見栄え重視時代ならではの戦略です。


ファブリックメーカー

ピエモンテ州トリノに本社を構えるファブリックメーカーで日本未上陸のL'Opificio社。ファッション業界で活躍していたテキスタイルデザイナーが生地のデザインを手掛けているため、上質でインテリアの世界にはあまりない大胆で繊細なファブリックを製作しています。クッションの同じ生地でコートやバッグも製作できるのも魅力のひとつ。


イタリアではインテリアとファッションの垣根がありません。建築家は建物はもちろん、洋服やバッグ、クルマまで日常のあらゆるもの全てをデザイン・設計します。ソファや椅子の張地などのファブリックも急速な技術革新で多種多様化しています。複雑な質感や、デジタルプリントによる柄など、表現できないデザインが無くなってきました。


水周りメーカー

ピエモンテ州にある水栓金具メーカーのGessi社は国内でも取り扱いがあります。本社工場で一番印象的だったのは、水栓金具という比較的な小さなパーツを保管する倉庫。音楽に合わせ、照明の色が変化し見せることを意識した空間は宇宙を彷徨うような感覚になりました。


工場内ではユニフォームもバリエーションがあるものの、統一感があり、企業ブランディングは随一でした。また、オーナーのコレクションであるオートバイやヴィンテージカーなどがディスプレイされていて飽きません。


様々なバスルームが提案されているショールームでは、オーナーが世界で買い集めてきたというアンティークがディスプレイされており、水栓金具の羅列でも飽きのこないスタイリング、ディスプレイが印象的でした。


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